尾鷲ヒノキの温もりと職人の技が生み出す家具

なごみ

こんにちは。地域の魅力発見アンバサダーのなごみです。
今日は、三重県紀北町にある尾鷲ヒノキを使った家具を作られている「ウッドメイク・キタムラ」の代表である北村英孝(きたむらひでたか)さんにお話を伺いました。

ウッドメイク・キタムラの代表をしている北村と申します。よろしくお願いいたします。

北村さん
なごみ

本日はよろしくお願いします!


この記事では、代表の北村さんの尾鷲ヒノキに対しての熱い思いや、ウッドメイク・キタムラのこだわり抜いた家具作りについて詳しくまとめています。

 ・尾鷲ヒノキってなに?
 ・ウッドメイク・キタムラってどんな会社?
 ・どんな家具があるの?

北村さんにインタビューした内容をもとに、このような疑問にお答えします。

前半ではウッドメイク・キタムラの創業の背景について、それ以降はウッドメイク・キタムラの家具など木工製品作りへの熱い想いやこだわりについて詳しく掘り下げていきます。

 

1. ウッドメイク・キタムラ創業の背景

 

ウッドメイク・キタムラは、三重県紀北町にある職人が丹精込めて作り上げる尾鷲ヒノキを使用した家具屋です。 社長である北村さんは、16歳の頃に校長先生の勧めで厳しい親方のもとに弟子入りし、大工としての技術を学びました。それから約30年にわたり、大工としての経験を積んできました。

しかし、その長い年月の中で、時代の移り変わりと共に、大工が扱う素材が次第に木材からベニヤなどの工業製品へと変わっていくことを実感していたそうです。さらに、間伐された木が放置され、山が荒れていく状況にも心を痛めていました。

こうした背景から、北村さんは平成5年にウッドメイク・キタムラを創業しました。本物の木を使い、その魅力を多くの人に伝えたいという強い思いが、創業の原動力となりました。 また、北村さんは親方から技術だけでなく、社交性も学びました。そのおかげで、今でも良いご縁がたくさんあると笑顔で語ってくれました。

なごみ

長年大工をされていた北村さんが、その職を離れる大きなきっかけは何だったんですか?

やっぱり、合板に嫌気がさしたんです。本当の木を扱いたかった…

北村さん
なごみ

本物の木にこだわるというのは、北村さんにとって大切な信念なんですね。

当時のベニヤなどの合板はホルムアルデヒドが含まれていて、目が痛くなったり、体に悪い影響があったんですよ。それがどうしても耐えられなくなってね。

北村さん
なごみ

そんなことがあるんですね。

なごみ

『ベニヤ 頭痛』で検索してみたら、シックハウス症候群という問題が出てきました。当たり前に過ごしている家や、使っている家具が原因でそんなことが起こるなんて、驚きです。

そうなんです。合板に含まれるホルムアルデヒドは揮発性有機化合物で、微量なら問題ないんですが、一定濃度を超えると体に悪影響を及ぼします。中には、微量でも頭痛やめまいを引き起こす人もいるんですよ。

北村さん
なごみ

それで、本物の木にこだわるようになったんですね。北村さんが手がけた内装で、お客さんのアトピーが治ったというエピソードも伺いましたが、すごいですね!

そうなんですよ。アトピーで悩んでいたお客さんの家のベニヤを全部剥がして、尾鷲ヒノキに内装を変えたら、症状が改善されたと聞いて、本当に嬉しかったです。

北村さん
なごみ

自分が手掛けた施工で、人の悩みが解決されるって、本当にやりがいがありますね。

ええ、まさにその通りです。お客さんから感謝の言葉をもらうと、これまでやってきたことが報われる気がします。やっぱり、本物の木には特別な力があるんだと、改めて実感しました。

北村さん
なごみ

まさに、北村さんが大切にしてきた思いが形になった瞬間ですね。

そうです。これからも、尾鷲ヒノキの魅力をもっと多くの人に伝えていきたいと思っています。

北村さん
 


北村さんが長年にわたって培ってきた技術と、本物の木材に対する強いこだわりは、ウッドメイク・キタムラの創業において欠かせない要素でした。 北村さんのご経験と信念が結集し、本物の木の持つ温かみや美しさを多くの人々に届けるため、この家具屋が誕生しました。 その精神は、今でもウッドメイク・キタムラのすべての作品に脈々と受け継がれています。

2. 「尾鷲ヒノキ」へのこだわり

 

ウッドメイク・キタムラさんでは「尾鷲ヒノキ」を使用しています。この尾鷲ヒノキを使用することには北村さんならではの断固たるこだわりがあるとのこと。

それは「森を守る」こと。

森を守ると聞くと木を加工する側ではなく、木を育て山を整備する林業を思い浮かべる方がほとんどだと思います。私も初めに北村さんからお話を伺った時は、「ウッドメイク・キタムラの他に林業もしているのかな?」とふと思いました。まず、ヒノキは建築材料として使われることが一般的ですが、家具の材料としてメインで使われることは珍しいそうです。

なごみ

確かにヒノキって家具として使われているイメージがないかも。ヒノキの家具って良い匂いするんだろうな~
でもなんであまり家具で使われることのないヒノキを使おうと考えたのだろう。

 


話を深く聞いていると北村さんは林業をしているわけでなく、作り手側で森を守ろうとしていました。 木材を扱う業者が良い木を育てようと間伐を行い、間伐された木を山に放置し、山が荒れていきます。この現実に北村さんは、間伐された木に目をつけました。当然間伐された木なのでそれほど太く大きな木ではありませんが、質の悪さには全く問題はなく香りや手触りはヒノキそのもの。

北村さんの扱うヒノキは単なるヒノキではなく速水林業が育てた「尾鷲ヒノキ」で、山を大切に想い日々森を整えながら木を育てる速水林業の間伐された尾鷲ヒノキを北村さんは扱っています。また、速水林業は北村さんが独立したときにとてもお世話になった過去もあるそうです。そのような繋がりの速水林業が、当時かなり難しかったFSC(森林管理協議会)を日本で初めて認証されました。

FSC(森林管理協議会)認証は森・製材・制作の3つの関係性が揃わないと取ることのできない国際的に難関な認証。このFSC認証を速水林業が受ける際の「制作」の役割を担っていたのがウッドメイク・キタムラ、製材は塩崎商店です。 美しい姿の森林をこれからも守り続けたいという3社の思いがひとつになったFSC認証です。
 


 

ちなみにウッドメイク・キタムラが作る家具などは全て尾鷲ヒノキは速水林業が育て、塩崎商店で製材されたものです。まさにFSC認証を受けた想いのリレーで繋がれた木材で作られているものとなっています。
 


 

また、北村さんは素材そのものを非常に大事にしており、木屑や鉋(かんな)によって削られた薄い木ですら帽子や飾り物にまで新しく変わる。ちなみにこの帽子や飾り物は北村さんの奥様の手作りであり、実際に見てみるととても細かく編まれており興味深いものでした。
 

なごみ

日本で初めてFSC認証ってすごい快挙ですよね。

そもそも良い木を育てるだけで自然破壊していると意味がないからね。しっかりと良い木を育てるために間伐した木を放置するのではなく使い道や山の環境も整えないと荒れていく一方だからね。

北村さん
なごみ

そのような気持ちが両者揃ったからこそのFSC認証。聞けば聞くほど素敵なストーリーです。

3. 職人の技と「出会い」の大切さ

堀口さん
 

ウッドメイク・キタムラの家具などは、北村さんと弟子の堀口さんの手により、丁寧に一つ一つ作り上げられています。 特に、家具デザイナーの小田原健さんがデザインした家具は、顧客から高く評価され、多くの人々に愛されています。北村さんは、製品のクオリティだけでなく、人との「出会い」を大切にし、それが彼の家具作りにおいて重要な役割を果たしています。 良い出会いがあるのも冒頭で伺った、厳しい親方から学んだ社交性のおかげだと北村さんは微笑みながら教えてくれました。

なごみ

良い出会いの他にはどんな出会いがありましたか?

良い出会いだけでなく、社交性があるゆえに作品が出来あがったのにお金が支払われないなんてこともあった。

北村さん
なごみ

なんてひどい・・・

損害は全てこちら持ちで大変だった。人生には良いことも悪いこともあるもんだ。

北村さん
なごみ

確かにそうですよね。

見せて頂いた作品の数々

 
 
 
 
 

こんなものまで木で作れるの!?と思うようなものまで作るウッドメイク・キタムラ。ひとつひとつがとても繊細な作業で作られております。実際に作品を触らせていただきましたが肌触りもよく、惜しみない作業の数々が伝わるものしかありませんでした。

4. 入ると思っていなかった100万円の注文

 

当時、紀北町のふるさと納税の返礼品にウッドメイク・キタムラの100万円の商品がありました。 北村さんはまさかこんなに大きな金額の商品が購入されるわけがないと思っていたそうですが、予想とは違いまさかの注文が入りました。北村さんは驚きながらも丹精を込めて商品を作り上げ、当時ふるさと納税の管理をしていた観光協会へ連絡しましたが、配送で届けられることを知りいてもたってもいられなくなりました。

ふるさと納税の返礼品が配送で届くことは何らおかしなことではないが、北村さんとして「こんなに大きな金額を紀北町に寄付をしてくれたのにも関わらず、配送で簡単に送ってしまうのは違う!」という思いでした。 しかしながら金額が大きいからといって違う方法で届ける事例を町として出してしまうと、今後の対応にも影響せざるを得ないことから配送の意思を曲げれませんでした。

このことから北村さんは自らのトラックに商品を載せて、遠方の購入者のもとへ届けに行ったそうです。北村さんは「直接感謝を伝えたかった」と。

なごみ

観光協会の考えも北村さんの考えもすごくわかります。

でも私は何としても直接商品を届けることで誠心誠意感謝を伝えられると思ったんだ。 大金のものを購入してもらったのに簡単に配送されるのは違うと思ったんだよね。

北村さん
なごみ

確かにそうですね。100万円のものが宅急便で届くイメージができない。

そうだろう?だからこれではダメだと思って、自分のトラックですぐに届けに向かったんだ。

北村さん
なごみ

届けに行った当時のことをやはりよく覚えていますか?

ああ、それはそれは。忘れることはないね。

北村さん

5. まとめ

 

ウッドメイク・キタムラは、北村さんの熟練された手作業により作り上げられる品々だけでなく、美しい山を後世にまで残せるよう職人としての立場から働きかけています。 扱う木材は間伐された木で大きな木ではないものの、北村さんの手によって見事な家具になった姿は圧巻です。また、この記事を読んでわかるように北村さんは非常に「義理と人情」に満ち溢れた人柄です。話せば話すほどに北村さんの優しく暖かい職人魂が伝わってきました。 この記事を通して、ウッドメイク・キタムラが作り上げる品々の魅力に触れ、山の未来についても少しだけ考えてみてはいかがでしょうか。