波佐見焼の歴史と魅力に迫る! 庶民が愛した「日常使いの器」を全国へ発信する西海陶器

なごみ

こんにちは。地域の魅力発見アンバサダーのなごみです。
今回はいま国内外で熱い視線を浴びる「波佐見焼」。その旗振り役とも言える 西海陶器株式会社 三代目社長 児玉賢太郎 さんに、焼き物の歴史だけでなく “町まるごとブランド化” を目指す情熱まで、とことん語っていただきます。
よろしくお願いします!

西海陶器株式会社の児玉です。よろしくおねがいします!

児玉さん


この記事では、「波佐見焼」を販売するだけでなく、町全体を波佐見焼を通じて盛り上げようと面白楽しく情熱を注いでいる西海陶器株式会社の三代目 児玉賢太郎さんに焦点を当てインタビューをしました。

 ・波佐見焼ってなに?
 ・焼き物から町を盛り上げるってどんなこと?
 ・波佐見町の魅力とは?

児玉さんにインタビューした内容をもとに、このような疑問にお答えします。
前半では波佐見焼と西海陶器株式会社の基本情報を、それ以降は波佐見焼と波佐見町の魅力、児玉さんが考える波佐見焼のビジョンについてまとめています。

波佐見焼というモノの魅力はもちろんのこと、「波佐見町に行ってみたいなぁ」とお話しすればするほど魅了される素敵なお話をたくさんお聞きすることができたので、皆さんもぜひ最後までご覧ください。
 

1. 波佐見焼とは?

長崎県波佐見町で作られている陶磁器のことを「波佐見焼」という。
江戸時代から庶民向けの食器として愛されてきましたが、明治以降は、有田焼の下請けとして事業をしてきました。
最近では波佐見焼という名前を耳にすることも少なくはないはず。
国内外問わず人気で、比較的安価で丈夫、なんといってもデザイン性が素敵で毎日の食卓を彩ってくれるバリエーション豊かな陶磁器です。
ではなぜ、有田焼として生産してきた「波佐見焼」が有田焼ではなく波佐見焼として人気になってきたのか、児玉さんのお聞きしていきましょう。

2. 波佐見焼が名乗りを上げた日

なごみ

児玉さん、まずは西海陶器さんと波佐見焼の“これまで”を伺いたいです。

うちの会社は祖父が創業し、当初は有田焼の卸が中心でした。 「波佐見焼」という言葉が表に出てきたのは今から25年くらい前です。それまでは有田焼の下請けとして事業をしてきました。 しかし、産地偽装問題を機にあらためて「波佐見焼」という名前を前面に掲げ、独立したんです。

児玉さん
なごみ

それって、いきなり「有田焼」ではなく、新ブランドを立ち上げたってことですか・・・?

そういうことです。 有田焼と名乗らず波佐見焼として勝負していこうと父が挑戦したんです。

児玉さん


日本の陶磁器業界では、有田焼は長年、名高い伝統を誇り、その高級感で広く知られています。特に、有田焼の産地である佐賀県は、歴史的な背景と共に、数多くの高級食器を生み出してきました。
しかし、有田焼を製造する範囲は広く、実際には近隣の地域でも、焼き物が製造されており、それら肥前地区の陶磁器は「有田焼」として総称されてきました。

有田焼と言えば佐賀県が思い浮かぶ人が大半ではないでしょうか?

この背景において、長崎県の波佐見町も例外ではありませんでした。当時の長崎県波佐見町でも有田焼が盛んに製造されていました。このような経緯があり「有田焼」とは、どこの名産物なのかと地域間の境界が不明瞭なことが課題になっていました。

そして2000年頃に、波佐見町で製造されていた陶磁器を有田焼ではなく、長崎県波佐見町の「波佐見焼」として新ブランドを立ち上げて再スタートを切るという大きな転換をされたのでした。
 

なごみ

すごい決断力ですね...!「波佐見焼」としてまずは何から始められたのですか?

まずは「波佐見焼」のアイデンティティを調査しましたね。そこから、江戸時代に大阪と京都を結ぶ淀川の船上で売られた “くらわんか碗”として波佐見焼が量産されていたことがわかりました。

児玉さん
なごみ

くらわんか碗...ですか?

「くらわんか?(食べませんか?)」と声をかけながら、酒や食べ物を売っていた小舟で使用されていた器なので「くらわんか碗」と呼ばれるようになったとされています。

児玉さん
なごみ

なるほど!食べませんか?椀ということですね!




江戸時代では石を原料にして磁器を作ることは日本で最先端技術でした。まさに有田焼は当時の最先端であり、高価な磁器でした。しかし、波佐見町周辺では、当時高価であった磁器を量産し安価で販売されていました。

「波佐見」として再スタートされた時に、江戸時代当時の庶民が磁器を使うきっかけはくらわんか碗の波佐見焼であったのではないか?庶民の食生活を支えていたのではないか?と考え、波佐見焼というものを「庶民の器」と定義しました。

庶民の器という生活に根差したアイデンティティこそが、現在「波佐見」が他産地との差別化を支える核となっています。

波佐見焼は安価でありつつも、有田焼時代の技術を引き継いだ陶磁器というわけです。

 

なごみ

「 ~ 焼」と呼ばれる器は確かに高価なイメージで手が出にくい・・・
けど、このお話を聞くと私でも手軽に良い器を購入できるって安心感があります!


最近では全長160m超の登り窯跡も見つかり、波佐見焼地域が遥か昔から量産産地だったという確かな証拠となりました。

3. 分業と協働で磨く産地力

なごみ

波佐見焼は分業体制と聞きます。具体的にはどういうことなんでしょうか?

生地屋、窯元、商社など役割が細かく分かれ、窯元だけで39社、商社は23社が稼働されています。分業だからこそ、それぞれが得意分野で腕を振るえますし、みんなで協力して“町全体で育つブランド”を目指しているんですよ。

児玉さん
なごみ

競い合うより、支え合う文化が根付いているんですね。
素敵な仕組みだなぁ・・・


39社の窯元と23の商社が連携する分業ネットワークこそが波佐見焼の強み。
それぞれが補完し合い協調することで、産地全体の相乗効果を高めています。

今回、お話を聞かせていただいている西海陶器さんは、23社ある商社の中で1番大きな会社さんで「波佐見焼」のリーディングカンパニーです。

4. 世界に伸びる器──海外展開とデザイン革新

なごみ

海外でも波佐見焼ファンが増えているとお聞きしました。

1990年代からシンガポール、アメリカ、中国(大連)、オランダなどに拠点を設けました。さらにデザイナーと組んで自社ブランドを立ち上げたことで、様々なブランドのOEM依頼も来るようになりました。

児玉さん
なごみ

柔軟なデザインと確かな技術の両立が、世界で選ばれる理由なんですね。

良い意味で囚われるものがなく、時代の変化に対応できるのが波佐見焼の魅力なんですよ。 こういうモノが流行りらしい・・・それじゃあ作ろう!というように、その時代の需要に柔軟に対応できます。

児玉さん


波佐見焼は、単に時代の流れに乗るだけではなく、これまで培ってきた「確かな技術」が魅力の一つです。波佐見焼を検索してみると、そのデザインや色使いが、時代を感じさせないおしゃれさを持っていることがわかります。

波佐見焼の特徴は、良い意味で「波佐見焼と言えばこれ!」といった固定観念に囚われていない点です。ブランドやデザイナーによって、見た目が大きく異なり、これが波佐見焼の多様性を生み出しています。そのため、さまざまなニーズに応えることができ、消費者にとって新鮮で魅力的な選択肢となっています。

そのようなブランド風土によって、海外で求められている需要に柔軟に対応することができ、伝統を守りつつも、波佐見焼は新たな価値を生み出しているのです。

少しずつ波佐見焼が世に出回り出した頃に「波佐見焼は節操がない」と言われました(笑) 質問なのですが今って湯呑みとマグカップどちらの方を頻繁に使いますか?

児玉さん
なごみ

家で頻繁に使うのは圧倒的にマグカップです!

そうですよね。 そうであれば我々は湯呑みよりマグカップを作るんです。 今の時代にあった売れる物を作るので「節操がない」といわれるんです(笑)

児玉さん
なごみ

節操がないってズバッと言われましたね・・・

捉え方によってはネガティブですけど、波佐見焼はポジティブに捉えています。 波佐見焼はその時代の食生活に合った物を作れているってことなんですよ!

児玉さん


時代と共に柔軟に変化してきた波佐見焼。今では誰もが知るApple社のマグカップ作成など、様々なOEMの依頼が届いています。

日本の「モノづくり」が海外に受け入れられていて、とても嬉しく感じます。

5. 30歳で社長就任──“丸投げ”が育てる人材

なごみ

児玉さんは30歳で代表になられたんですよね?

そうです。 大学卒業後に留学していて、帰ってきたら「中国に会社作ってこい」と丸投げされました(笑)
そこから3年間中国で仕事して30歳で代表になりました。

児玉さん
なごみ

す、す、すごい託し方ですね・・・

そうですよね~
でも、なんとかなるんです。というか、なんとかするんです(笑)
何もわからない中で突き進んだ経験が今も活きているなと実感します。 祖父が父を「東京へ」、父が僕を「中国へ」と新規事業を任せてくれたように、私も若い社員にどんどん「やってみろ」と丸投げします。不安でも調べて形にする過程が人間力を高めますから。

児玉さん
なごみ

任せて伸ばす文化が、次の世代を育てるわけですね。
今日は実は西海陶器の若手社員さんが取材に同席されていますが、「任される」ことについてお聞きしても良いですか?

どうぞ(笑)

児玉さん
なごみ

実際にお仕事の任され方についてどう思いますか?

なんでもさせてもらえる反面、どうしよう・・・と悩むことは正直あります(笑)
でも、知らないことを調べて動くことによって成長していると感じます。
昨日外部の方に成長速度が早いと褒めていただきました。

若手社員さん


世代を重ねるごとに「ゼロからイチ」を生み出す挑戦を繰り返してきた西海陶器では、若手に大胆に権限を委ねる“丸投げ”こそが社風として根づいています。

未知の領域に飛び込み、自分で調べて決め、時にはつまずきながらも前へ進む――そんな経験が一人ひとりの成長エンジンとなり、会社全体をぐっと前に押し出してくれています。ベテランが築いた土台の上に、若手の自由な発想とスピード感が加わり、歴史と新しさがいい具合に混ざり合っているのも大きな魅力。

これからどんな事業を立ち上げ、陶磁器の世界に新風を吹き込んでいくのか、目が離せませんね。

6. 次の世代へのバトン

なごみ

これから先、波佐見焼をどんなふうに進化させたいですか?

父からバトンを受け取ったころ、波佐見焼はちょうど追い風を受けていました。
次の世代へ渡すときには、器を「買う」だけでなく
町に来て職人と話し、工房で手に取り、自分の一皿を選ぶ――
そんな循環を当たり前にしたいんです。
器そのものより、そこにいる“人”と“町”を好きになってもらえたら最高ですね。

児玉さん
なごみ

モノを作って終わりじゃなくて、町ぐるみで魅力を届けたい――その熱量、びしびし伝わってきます!


児玉さんが描く未来は、器を通して「旅そのものをデザインする」クラフトツーリズムの世界。波佐見町を歩き、作り手と笑い合いながら器を選ぶ――そんな体験こそが次の波佐見焼を育てると信じています。

そのビジョンを象徴するのが、製陶所跡をリノベした複合施設「西の原」。雑貨店やカフェ、ボルダリングジムなど9店舗が立ち並び、歴史ある建物と最先端のカルチャーが同居する空間は、まさに“町全体がショールーム”。

さらに2024年11月オープンのビュッフェレストラン「御堂舎」では、季節の料理を波佐見焼の器で楽しめるとあって連日行列。県内外から訪れるゲストの笑顔が、町と器の新しいつながりを物語っています。

波佐見焼ファンはもちろん、「ちょっと面白い旅がしたい」という人にもぴったりの目的地。
次の世代へバトンが渡る日、波佐見町はどんな景色になっているのか――その瞬間を見届けるためにも、ぜひ現地で“未来の器”を手に取ってみてください。

御堂舎に訪れる際は、事前予約をお忘れなく。
・西の原 https://24nohara.jp/
・御堂舎 https://www.instagram.com/midouya833/

7. “B 品をなくす”ブランドの立ち上げ


西海陶器では一般的にB級品と言われるものもA級商品として販売する「ALONGU(アロング)」というブランドを立ち上げました。

ALONGU の器には、いわゆる “B 級” の区分がありません。
鉄粉や煤(すす)、小さな気泡、焼き物では避けにくい痕も、使うほどに味になると考えています。

児玉さん
なごみ

それって従来の “B 級” をそのまま A 級に格上げするイメージですか?

そうです。「欠け」や「割れ」だけは弾きますが、鉄粉やピンホールは “味” として個体差を楽しんでもらう。
資源も職人の手間も無駄にしない、サステナブルな仕組みなんですよ。

児玉さん
なごみ

弱点を味わいに変える発想ですね!舞台裏まで共感できるブランド、応援したくなります。


ALONGU が示すのは、均質さよりも手仕事の痕跡にぬくもりを感じる新しいものさし。
器を選ぶことは、作り手の物語を選ぶということ――波佐見焼の未来を照らす挑戦です。

8. 町ぐるみの挑戦──若者・よそ者・馬鹿者が風を起こす

なごみ

産地全体が一丸となって盛り上がる秘訣は何でしょう?

“若者・よそ者・馬鹿者”の3者が風を起こす、と言いますよね。 波佐見町はまさにそれで、外から来たデザイナーやUターン組の若手が自由に挑戦できる空気があります。私も「節操がない」と笑われるくらい、新しいライフスタイルに合わせて柔軟に変えてきました。

児玉さん
なごみ

伝統だけにこだわらない風通しの良さが、新しい波を呼び込むんですね。

ええ。「若者」のスピード感、「よそ者」の客観的な視点、そして常識を覆す「馬鹿者」の突き抜けた発想。
そこにベテランの技術が加わると、産地全体がひとつのチームになるんです。

児玉さん


多様な視点を受け入れる土壌こそが、波佐見焼をしなやかにアップデートし続ける秘訣。
伝統と革新のバランスを取りながら、町ぐるみで次のイノベーションを育んでいます。

9. これからを担う世代へ

なごみ

最後に、次世代や読者へメッセージをお願いします。

食卓にある器には、必ず誰かの手仕事が宿っています。
まずは「誰が作ったんだろう?」と興味をもってみてください。
そしてお気に入りの器で食事を楽しむその小さな習慣の先で、波佐見焼にたどり着いてくれたら嬉しいです。

児玉さん


児玉さんが届けたいのは、「モノ越しの一期一会」。
器を手に取るたび、作り手や産地をふと想う――そんな瞬間が日常を少し豊かにしてくれるはずです。

10. まとめ

庶民の器として歩みを始めた波佐見焼は、分業体制と挑戦の気質を武器に、約25年で世界が注目するブランドへ成長しました。

39社の窯元と 23の商社が「得意を持ち寄るチーム」となり、さらに「若者」・「よそ者」・「馬鹿者」の多様な視点を取り込むことで、伝統と革新が心地よく混ざり合っています。

波佐見町を訪れれば、器の魅力だけでなく、町の温かさと作り手の情熱に触れられるはず。
次の旅先に迷ったら、ぜひ“未来の器”を探しに波佐見へ。

西海陶器株式会社 https://www.saikaitoki.com/