8. 花で町をつくる──世羅高原農場と世羅町のこれから
花観光の変化は、少しずつ、しかし確実に町の姿を変え始めていました。
なごみ
世羅高原農場って、今では町全体にも影響を与えている存在なんですね。
そうですね。初めは1つの農園だけでしたが、複数の農園をグループとして運営することになって、町づくりといったところにも影響を及ぼす業態になってきたのを感じるようになりました。
吉宗さん
はじまりは、経営を安定させるための工夫だった。
しかし春から秋までお客様に喜んでもらうために、それぞれの農園で完結するのではなく、4つの農園が連携することで、"花巡り"という新しい体験を生み出しました。
こうして生まれたのが、「花のまち・世羅」というイメージです。
かつては、"シーズンだけ賑わう場所"だった観光農園。
「一発屋」と評される時期もあったと言います。
それが今では、年間を通して人が訪れる場所へと変わりつつあります。
その変化は、単なる集客の安定ではありません。
地域そのものの価値を、少しずつ引き上げていくものでもありました。
最終的には、花の観光を地域の"花形産業"にしていきたいと思っています。
吉宗さん
お客さんが世羅高原に来てよかったと感動してくれること。
あわせて、みんながちゃんと稼げて、地域の人が町に誇りを持って主体的にまちづくりに関わってくれるような産業ですね。
吉宗さん
花を見て感動してくれる人が集まる。周りの地域も潤う。働く人がやりがいを感じる。
そして、町に誇りが生まれ、地域イメージにつながる。
花をきっかけに、そんな循環をつくりたい。
それが、吉宗さんの描く未来です。
なごみ
これからの世羅町の観光は、どんな形を目指しているんですか?
これまでは、「世羅高原農場が人を呼んでくれるからありがたい」という関係だった部分もあったと思うんです。
吉宗さん
でもこれからは、地域の事業者の方たちと一緒に取り組んでいきたいと思っています。
吉宗さん
世羅町の観光を、特定の施設だけではなく「ともに地域をつくる存在」として。
その動きは、すでに少しずつ始まっています。
近年では、町内の事業者と連携した企画や宿泊施設との共同プロジェクトなども生まれています。
2026年には、ホテルとの共同企画も始まり、日帰り観光だけでなく滞在型観光の取り組みも進められています。
花を見て帰る観光から、町に滞在し、地域の魅力をゆっくり体験する観光へ。
世羅町の花観光は、今、新しい段階へ進もうとしています。
そしてもうひとつ、吉宗さんが大切にしているものがあります。
それは、訪れた人が持ち帰る"感情"です。
なごみ
世羅町に初めて来る人には、どんな気持ちを持ち帰ってほしいですか?
やっぱり、予想を超えるような感動を味わってほしいですね。
吉宗さん
実際に世羅高原農場では、花畑を特別な思い出の場所として訪れる人も増えているといいます。
プロポーズとか、サプライズでブーケを渡される方も結構多いんですよ。
花畑の中だと、花束も渡しやすいのかもしれませんね。
吉宗さん
結婚式の前撮りや、プロポーズ、サプライズの花束など。
人生の大切な瞬間を、この場所で迎える人も少なくありません。
広い空の下、花に囲まれた景色の中で生まれる特別な時間。
世羅高原農場がつくろうとしているのは、
ただ美しい花畑ではなく、人の記憶に残る場所なのかもしれません。
花はみんなをしあわせにする、という想いでやっているので、
地域も含めて、そういう場所になっていったら嬉しいですね。
吉宗さん
そして最後に、吉宗さんはこう語ります。
自分たちでつくって、自分たちでおもてなしをする。
その中で、世羅高原らしさや、作り手の想いが伝わるような花畑を、これからもつくっていきたいです。
吉宗さん
目の前に広がる一面の花。
その美しさの奥には、土地の気候、働く人の想い、そして地域の未来が重なっています。